どうしようもない気持ちが一杯になって、

 太陽に焦らされて雲になって、

 君の上に降る雨になれたなら・・・、

 全部君に届くだろうか




Sweetest Rain




 手塚の出発は今週末まで迫っていた.

 同じコートで練習することも暫くはなくなってしまう.

 彼のいないコートなんてやっぱり想像できなかった.

 「要するに、不二は寂しいんだね.」

 乾に言われた言葉の意味さえ最初は解らなかった.

 彼が決めたことに口を出す権利なんてないし、そんなつもりもない.

 彼には治療が必要なんだ.

 だから、それが一番良い方法だと分かっているのに、

 行かないでほしい≠ニ思ってしまうのは僕の我が儘でしかない.

 不二はぼんやりとその人≠フ後姿を見つめた.

 いつでも真っ直ぐな人だから無上に憧れた.

 ずっとその背中を見ていたくて手を伸ばしてた.

 「なんだ.」

 急に前を歩いていた手塚が振り向く.

 そして漸く無意識に彼の制服の袖を掴んでいたことに気がついた.

 瞬間、頬が熱くなる.

 離そうとした手を逆に捕らえられて、向かい合ったまま動けない.

 「どうしたんだ.」

 彼の目が近い.

 「なんでもないよ.」

 少し屈んだ彼と目線が逢ってしまう.

 「お前の嘘はわかりやすいな.」

 嘘じゃない≠ニ言い返したくて出来なかった.

 今、口を開いたら、一番言いたくないことを言ってしまいそうで・・・

 真っ直ぐ歩き続けてほしいと思うのに、僕の心は欠陥品で、ちぐはぐなことばかり望んでしまう.

 何も言おうとしない不二を手塚は強引に抱きしめた

 「、っ・・・」

 肩の広さに噎せそうになって、体温に胸が熱くなって・・・.

 彼の腕の中は居心地がいいはずなのに、どうして息が苦しいの.

 我慢してたのに、

 昨夜あんなに、泣き果てたと思ったのに、この涙はどこからくるの.

 「不二・・・、」

 不二にしか向けられない優しい声.

 抱きしめた身体はやけに細くて、小刻みに震える彼がいつもより小さく思えた.

 悲しませたくないと思えば思うほどこの腕でしてやれることなどないのだと痛感してしまう.

 「すぐ戻ってくる.」

 腕の中で不二は小さく頷いた.




 前言を撤回しよう




 募る想いを天に託すより




 気持ちを伝える努力をするから




 雨になるそのときは





 君の傷を癒せる雨になりたい